クラブのあとでクラブに行く
昔から使っている単語でも、時代とともにアクセントが「平板化」していきます。
童謡で有名な「赤とんぼ」のアクセントは、昭和30年代は「頭高」でした。でも昭和40年代、深夜放送隆盛の時代に大ブレークしたあのねのねの「赤とんぼの歌」で、赤とんぼは「平板」アクセントです。
こうしたアクセントの平板化は、時代とともにどんどん進んでいるように思います。
「紅(くれない)」も今は「平板」アクセントですが、以前は前半にアクセントがありましたし、「眼光鋭い」というときに使う「眼光」のアクセントも、かつては「頭高」。お笑いコンビの名前でもあり、元は妖怪の名前である「かまいたち」も、古くは「か」にアクセントがありました。
これが外来語(カタカナ語)となると、平板化現象はさらに顕著です。
「ダイビング」「フィッシング」「プレッシャー」「マネージャー」も最近は平板で言うことが主流になっていますし、通信アプリの「ライン」は、出てきたころから『平板』です。
ゴルフの道具、部活、夜の姫君が迎えてくれる場所は「頭高」の「クラブ」ですが、かつてディスコといったダンスミュージック流れる空間は「平板」の「クラブ」で、アクセントの違いは最近の辞書にも出ています。
このほかにも「バイク」や「サーファー」「モデル」などが『平板』アクセントで使われるようになりました。この流れを「専門家集団が使ったアクセントが定着した」と分析する人もいます。
私は日本の「短縮文化」が影響しているのではと思っています。コンビニエンスストアが「コンビニ」、アニメーションが「アニメ」、スマートフォンが「スマホ」、アルバイトが「バイト」。「アニメ」を除けばみんな平板アクセントです。
この傾向は日本語にも当てはまり、「公正取引委員会」→「コートリ」、国際連合→「コクレン」、麻薬取締官→「マトリ」…略して言うときはみんな『平板』です。
若い世代は遊び感覚で新しい言葉をどんどん「略」していきますから、これからももっともっと平板語は増えていくと思います。