ホームラーン!
一時期、サッカーの中継で「ゴー――――――――――――ル!」と兎に角長く引っ張るゴールコールや、「ゴルゴルゴルゴルゴル…」みたいなコールが流行ったことがありました。おそらくブラジルあたりの中継に影響を受けたのではないかと思います。さすがにちょっと癖が強すぎて、廃れていきましたが、実況中継にもこうした「流行」があります。
野球の中継も最初は「名文調」でした。「夕闇迫る神宮球場、ねぐらに急ぐカラスの一羽二羽…」でしたでしょうか、松内則三アナウンサーの実況は、ラジオの前で聞く人たちの脳裏に、神宮の森と夕暮れの風景を想像させたでしょう。
松内さんは投手の動作における「振りかぶりました」という今でも使う表現を作り上げた方だと聞きますし、隆盛を迎えようとする野球界を盛り上げる表現の基礎を作られた方だといえます。「~であります」スタイルの時代のスーパースターですね。
サッカーで言えば、まだ日本語での実況がメジャーでないころに、二人の選手がパス交換をしながら敵を突破していく戦術を「ワンツー」と一言で言い切る今のスタイルの土台を作ったのは金子勝彦アナウンサーでした。それまでは「壁パス」って言っていたんですから、イメージが全く違いますよね。
中継と言えば、小西徳郎さんの「なんと申しましょうか~」という解説も懐かしい。ラジオのスポーツ中継が子守歌だった私にとって、解説者と言えば野球のトクローさん、相撲の神風さん、実況では、野球の渡辺謙太郎さん山田二郎さん、深澤弘さん、相撲の北出清五郎さんや杉山さんでした。
「さよならホームラン」という表現を最初にどなたが使ったのかはわかりませんが、今ではメジャーの中継でもたまに使われたりすると聞きます。
スポーツの「時代」を作るのは無論選手ですが、もう一方の立役者は「実況」「解説」なんだと思います。そういう気概は持ち続けたいものですね。