櫻の字にはなぜ貝が乗ってる?

 沖縄の緋寒桜はとうに散りましたが、ソメイヨシノはこれからがその季節です。とはいえ、昨年に続いて桜の木の下にブルーシートを敷いて、酒盛りというわけにはいかない状況です。まあ花を愛でるというなら、何も酒盛りをする必要はないんですけどね。

 ところで、「桜」という字は新字体。旧字体では「櫻」と書きます。花なのに、なぜ貝が二つ乗っているのでしょうか。花が小さな貝に見える…ということでもなさそうです。

 大漢和辞典を引いてみると、「!」。

 「さくら」ではなく「ゆすらうめ」と書かれているではありませんか。なんじゃこりゃ…ということで読み進めてみると、「ゆすらうめ」というのは「梅桃」とも書き、白い五輪の花をつけます。白い花であって「桜色」の花ではありません。実は熟すと濃紅色になり、食用になる。このへんはサクランボっぽいなあと思って先を見ていくと、「櫻桃」という欄があって、その説明として「果実を食用とするさくらの一種。またその実。さくらんぼう」と書いているではありませんか。この字を日本では「さくら」と読ませるようになった。

 つくりの「嬰」を確認してみると、歌意「めぐる」「めぐらす」。女性の喉元を華やかにする「貝を連ねた首飾り」と説明がありました。貝は古の宝物。それを連ねた首飾り。そんな字が木偏の横に鎮座している。さくらの花は昔の人にも美しい首飾りにしたいと思わせるものだったのでしょう。

 日本人はさくらを愛し、改良を重ね、ソメイヨシノという傑作を創り出しました。「櫻」が「ゆすらうめ」ではなく、「さくら」になったのは、日本人の桜への愛情のたまものといえそうです。

 ちなみに「嬰」は「みどりご」=「生まれて間もない赤ん坊」のことも言います。さくら同様、たからものであることに変わりはありません。

2021-03-18 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

関連記事

Comment





Comment