数詞の浸食

 新型コロナウイルスの第4波が目に見えてきました。

 ボクシングでは一発で倒すことができればそれに越したことはありませんが、小さなボディブローを何度も叩き込めば、中盤に一気に流れを引き寄せることができます。受ける方から見るとボディは嫌なパンチなのです。何度も波がやってくるのは精神的にそうとう堪えます。

 1月以来、一日の感染者数が三桁となった沖縄。このニュースを県内すべてのメディアが伝えています。

 「再び“さんけた”に乗りました」

 あれ?“さんけた”って言うんだっけ?「桁」は『和語数詞』から始まると思っていました。『和語数詞』とは「ひ(と)」「ふ(た)」「み」「よ」「いつ」「む」「なな」「や」「ここの」「とお」と続く読み方。小学館の「数え方の辞典」を見ると、「桁」は漢語数詞と和語数詞の組み合わせを意味するマークがついています。私が子供のころから使ってきたのは「ひとけた」「ふた  けた」「みけた」「よけた」「ごけた」「ろっけた」「ななけた」「はちけた」…と、「五」から漢語数詞になるというもの。ネットで検索しても「三桁」は「みけた」と出てきます。

 「NHKことばのハンドブック第2版」(2016年3月第14刷)を見ると、「三桁」の読み方は「み(さん)」となっていて、「さんけた」は許容するという書き方です。ところが「NHK日本語発音アクセント辞典」(2016年5月第)の数詞・助数詞の発音をみると、「三桁」は「サンケタ ミケタ」と書いてあり、「サンケタ」が先に来ています。この時期に何かがあったのでしょうか。

 調べてみるとNHK放送文化研究所が出している「放送研究と調査」(2016年6月)に変化を示すリポートがありました。「和語系数詞の衰退」と題したリポートには「和語系の数詞がどんどん衰退し,もともと『ひと,ふた…』と言っていたものも,特に『3』以降の数については,『み,よ,いつ…』とならずに『4さん,よん,ご…』の漢語系の読みに取って代わられる傾向にある」と書かれています。世の中の流れ(若者の言葉遣い)を見て「三桁」は「みけた」から「さんけた」へと移ったということのようです。(「みけた」がきえたわけではありませんが)リポートはそのうち「三行半(みくだりはん)」など熟語以外から和語数詞は消えてしまうのではないかとも書いています。

 しかし、私は思うのです。そこで流れに掉さして一気にコトバを変えてしまうのか、踏みとどまるのか。そこは放送側の姿勢なのではないかと。

 ちなみに「第4波」は「だいよんは」ではなく「だいよんぱ」です。

 

2021-03-31 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

関連記事

Comment





Comment