焼いてないけどヤキソバ

 時々無性に「カップ焼きそば」が食べたくなる時がある。年に数回、無性に食べたくなるのである。

 「カップ焼きそば」とはいうものの、焼いてない。焼いてないけど焼きそばなのである。最初の頃は“焼いてない焼きそば”に抵抗があった。でもそのうちにそんな拘りはどこかに行ってしまった。

 同じように“焼いてない”食べ物はほかにもある。

 「茄子の鴫(しぎ)焼」

ナスのみそ田楽のことである。我が家では「茄子味噌」のことをシギ焼きと言っていた。ただいずれにしても焼くのは茄子である。鴫焼って何だろうと思って調べてみたら、昔は鴫という鳥を捕って、本当に串にさして焼いていたらしい。実際いまでも、タシギとヤマシギは狩猟の対象だと書いてあった。沖縄でもいろいろな鴫の仲間を見ることができる。ヤマシギ、アマミヤマシギ、タシギ、オグロシギ、オオソリハシシギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、ツルシギ、アカアシシギ、コアオアシシギ、アオアシシギ、クサシギ、タカブシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、イソシギ、キョウジョシギ、オバシギ、ミユビシギ、トウネン、ヒバリシギ、アメリカウズラシギ、ウズラシギ、ハマシギ、キリアイ。

 ヤマドウィ(ヤンバルクイナ)も食べていたというから、シギも食べていたかもしれない。実話をもとに書かれた吉村昭さんの「漂流」を読んでいると、アホウドリの肉だけを食べてもニンゲン生きていけるらしい。そう考えると干ばつの時など、昔の人は捕まえられるものは何でも食べていただろう。

話は戻るが、日本の戦国時代には、芋の蔓を綯った縄に味噌を練りこみ、それをベルト代わりにして戦場に行ったという。コメは干し飯(ほしいい)である。古い時代には糒(ほしい)と呼んだ。米を炊いたあと。水にさらして天日で乾燥させたもので、なんと20年も保存がきくといい、非常食として作っている人も多い。最近は電子レンジで作るようだ。干し飯のいいところは簡単に「ごはん」に戻せることである。熱湯をかければいい。この流れでわかる通り、インスタント食品は日本のお家芸なのである。さらに加えて言えば梅干しだって100年以上保存できる。

炊いてないごはんに煮てない味噌汁。数百年後に、焼いてない焼きそばがあるのも道理だと思う。

2020-06-19 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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